<南風>物のねうちとお金のねうち


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 コロナ後の経済はどうなるのだろうか。

 経済の専門家でないので、理論的にも実際上も分からない。第2次大戦前後、沖縄復帰前後と経済の激動期をおぼろげながら体験して、貨幣価値の変動による社会の変化を実感してきた。

 父は丁稚(でっち)奉公、軍隊生活など苦労したようだが、性格は明るかった。お酒が大好きで、貯金と保険は嫌いだった。軍隊などで貯めた戦前の貯金や保険が、戦後、無価値になった経験だと思う。それはそうだろう、戦後の物価上昇率は100倍とも言われ貨幣価値が激減した。そのとき、ある現大手スーパーは、あるだけの現金を集めて商品に換え、現金でなく実物にシフトして、混乱期を克服し後の大をなした。

 沖縄の復帰前後にも似たようなことが起こったようだ。1973年の3月に東京から沖縄へ移住したが、その当時の沖縄の人の話では、復帰前の1ドル札は、復帰後の千円札よりもはるかに価値があったと言う。復帰前に借金をして不動産を買っていた企業は、借金の目減りと、不動産の値上がりで大きな利益を得た。めったにはない経済変動の成功例かもしれない。

 戦後と復帰後の二つの激動期が教示しているのは、金融資産と実物資産の時点的な価値の変化とその影響である。

 コロナ前後も大きな経済変動が起きるだろう。経済環境の激変と、ここ数年の安倍総理や黒田日銀総裁の貨幣膨張策、経済緊急対策などで貨幣量も増している。

 最近、緊急融資について、企業から相談を受けることが多く、従来は借金反対であったが、今回は借金すべきと答えている。

 沖縄の人は、戦後、復帰後と2度もお金の激動期を経験しているので、賢く対応してほしい。こんな折に、企業間の格差は大きくつくようだ。
(山内眞樹、公認会計士)