<南風>新型コロナとチャンス


社会
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 昨年6月にファッションをメインにした大型モールが開業してからはや1年がたった。開店に合わせた徹夜組を含む行列ができ、周辺道路は渋滞の極みであった。新聞記事によると混雑時間帯には、安謝から車で1時間20分を要した。大型モールに集まる消費者は、何を求めているのだろうか。

 買い物、食事、リゾート、ハイライフ、バリュー志向など日常を超えた何物かにひかれているのだろう。大型モールの起源は、砂漠のオアシスだといわれている。人々は砂漠の荒涼と索漠、熱気と無味乾燥から、緑と水、休息と快適を求めてオアシスに集まった。しかし、コロナ後は人々の消費行動に変化が起きるのではないだろうか。生物学において、いかに小さい淘汰にせよその有利・不利の差により導かれる選抜は、次世代において不適応な個体を排除するという重大な結果を招く。

 小さな淘汰、Eコマースの台頭は、コロナを転機として、日々勢いを増している。ショッピングモールの大規模、集客力、価値の創出は、その存在意義を今や問われている。全国3千軒を超え、総テナント数は16万軒、年間販売額31兆円の地位は今を頂点として、この先は、さらに激しい戦いが見られるだろう。目の前に競争と淘汰の時代を迎えたのではないかと思う。

 増加の傾向にあった外国人観光客の需要は激減し、しかも、全国的な人口減が進み、県内でも2025年には減少へ転じるといわれている。観光需要にも支えられた流通業界は、これまでも今後も、国内、国際情勢の変動に左右されやすいリスクを持っている。しかし、見方によっては、多くの不確定要素と淘汰は、沖縄経済の一つの「可能性」とも言える。沖縄経済、特に流通業界には「経済の崖」を克服して、新しい時代をつくるチャンスでもある。

(山内眞樹、公認会計士)