<南風>とっておきの決めぜりふ


社会
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 とりあえず「見えなくなる」問題は棚上げさせてほしい。

 今の私は決して無策ではない。むしろ模索している。地元の視覚障害者団体に入り、先輩方の生きざまを胸に刻んでいる。医療関係者が中心の山口県ロービジョン活動にも参加し、当事者の立場から発信している。

 そして、ある眼科でアドバイザー役を始める予定だ。今、医療と福祉がうまくかみ合っていない。そこで当事者の私が相談相手となり、障害手帳、就労、支援機器、リハビリの大切さなどの情報をその場で提供できるようにしたい。もちろん、悩める相談者の声に耳を傾けるだけでもいい。視覚障害者の駆け込み寺が眼科内にある、そんな新しい支援の形をつくりたいと本気で考えている。

 中途視覚障害者の就労問題にも力を入れ始めた。顕微鏡と私の不思議な縁がこのコラムの主題だったので触れてこなかったが、私は急激な視覚の悪化のため、3年前に大きく挫折した。やむを得ず休職となり、将来が全く見えない時期があった。しかし、リハビリを経て、どうにか復職した。この体験から講演する機会も増え、いつしか発信者となった。

 さて、話を戻そう。私はビジュアル系をいつかは卒業するのだろうか? うーん、今は本当にわからないので、「まあ、しばらくはこのまま続けさせて」と答えたい。

 現実、私に残された時間はそう多くない。でも、誰も踏み入れたことのない世界を顕微鏡で見たい。そのときのために超イケてるセリフを用意してある。

 「To do science,you do not need sight,but you do need vision.」(科学をやるのに視覚はいらない。でも、ビジョンは必要だ)

 きっと言ってみせる。だから、もう少し一緒に心震える旅をしようか、相棒。
(島袋勝弥、宇部工業高等専門学校准教授)