<南風>命を守る経済を育むこと


社会
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 今回含めて計13回執筆させていただいた南風コラムも、今日が最終回となる。

 女性の力とSDGsの話から始まり、小泉大臣の育休をきっかけとしての男女共に育休から得られる感覚のこと、そして残りの回は新型コロナウイルスの影響の中で気付かされた大切なことについて、アジアの女性起業家たちの新たな取り組み事例などを紹介した。

 この半年で世界は大きく揺らぎ、変化している。この世界の社会経済システムの揺らぎは、ポスト資本主義の議論を盛り上げる契機ともなっている。今回の新型コロナウイルス拡大によって、グローバル化した社会の脆弱(ぜいじゃく)な側面や、社会システムの歪(ひず)み、その歪みから生み出された格差や分断を、私たちは目の当たりにし、もはや無視できない状況にある。

 思想家ジャック・アタリ氏は、「命を守る経済」の重要性を説く。私たちは、効率性を求め消費を繰り返す経済から、優先順位を改めて見直し、多様性を受容した経済を育み直す必要がある。その際、地域企業や非営利組織が重要な担い手になってくる。私がこの数年関わっているアジアの女性社会起業家たちは、まさにポスト資本主義のあり方を模索して実践している人たちである。

 沖縄で大切に継がれている文化や、世代を超えて継承される平和を尊ぶ気持ちは、「命を守る経済」の根幹を担う意識であると思う。戦後75年を迎え、ポスト資本主義として利他の精神の重要性がうたわれる一方で、今の世界は新たな緊張関係にもある。平和は日々の積み重ねの中にあり、経済もまた私たちの日々の生活の選択の中で育まれていることを改めて認識し、感謝と共に連載の最後としたい。

 また多くの人が、その文化を感じ、平和を実感することのできる沖縄を訪れる日が来ますように。
(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事 re:terra社長)