<南風>世界と歩む沖縄へ


社会
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 アフリカや国際協力を少しでも身近に感じていただきたい、と書き始めて半年。その間に新型コロナウイルス感染拡大により日常が一変しました。ずっと、私たちの命を守るために医療現場に立ち続ける方々、それを支える方々に心から感謝と敬意を表します。

 今後、感染防止と経済活動を両立させる「ウィズコロナ」の状況では、誰もが手指の消毒、マスクの着用、混雑の回避などを実践していくのでしょう。でも、ケニアにいる知人から現地の状況を聞くと、それも決して当たり前にできることではありません。脆弱(ぜいじゃく)な医療体制もさることながら、首都のナイロビでも地域によって、きれいな水や石鹸(せっけん)がない、というのが現実なのです。ご紹介してきたようにケニアは魅力的で可能性に溢(あふ)れていますが、途上国としてさまざまな困難にもがいています。国境のない感染症に立ち向かうには、皆が世界に関心を持ち、共感し、連帯することが不可欠だと私は感じています。

 世界が直面する脅威として、テロも挙げられます。私も何度か訪れたナイロビ市内の複合施設が、帰国直前にイスラム過激派に襲撃され、大変ショックを受けました。これまでJICA関係者が犠牲となる事件もあり、国際協力の同志として深い悲しみと憤りを禁じ得ません。こんなことが続かないよう何をすべきか。私は、沖縄で平和への誓いが大切に引き継がれていることに希望を持ちます。戦没者追悼式や平和学習で伝わってきた、亡くなられた方々への追悼と被害者にも加害者にもならない、二度と戦争になってはいけないとの決意が、世界を変える力になると思っています。

 沖縄が目指している将来像は、世界のSDGsの実現をリードするものです。一人一人の命と尊厳を守る社会を、新米ウチナーンチュの私も皆さんと一緒になって、作っていきたいです。
(佐野景子、JICA沖縄センター長)