<南風>夢見叶える、おとなたち


社会
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 TVドラマ出演から始まった私の役者人生はその後、舞台中心となりました。2004年、東京から拠点を沖縄に移した私の舞台デビューは国立劇場での「泊阿嘉」。沖縄口が分からなかったこともあり、苦労した記憶は鮮明に残っています。それから、舞台だけではなく、演劇に関する専門学校の講師、TVドラマ、CMやナレーション、映画等さまざまな場面で演技に関わる日々となりました。

 そんなある日、母校の同窓会に参加。中学時代はあまり交流の無かった友人の一人がふらりとやってきて「役者かぁ、すごいね。今、親父(おやじ)バンドって流行(はや)っているよね。僕、楽器はできないけど、お芝居することはできるんじゃないかな。ねえ、オヤジ劇団作れないかな」と。酒の席でもあったため、生返事で「できるんじゃない」と伝えた3日後、突然電話がなり、はじめて彼は本気だったと気づかされました。

 それからの展開は非常に速く、友人も想像以上の熱心さ。それに応えるため、私も持っているアイデアや必要な情報を共有しました。友人、彼の弟と3人でスタートした劇団名は「劇艶(げきしょく)おとな団」。演劇を楽しむ「おとな」のための劇団であり、時には“おとな”らしい艶っぽさも出せればと命名。そして、「おとなが楽しみ演じている姿を、子どもたちに知ってもらうことで、子どもたちにも夢を持ってもらいたい」というビジョンが、「おとなが夢を見叶(かな)えなきゃ、子どもと夢を語れない」というのが、おとな団のキャッチコピーとなり、同じ思いを抱く仲間も10人まで増えていきました。

 11年6月25日、劇艶おとな団は旗揚げ公演。初めに紹介された紙面では「初老」という文字が光っていましたが、それでいいです。「おとな」だからこそ楽しみ、夢を見られる場所、それが「劇艶おとな団」です。
(当山彰一、俳優)