よくやってるよなあ、と思う。
外国で医師として働くのは、さまざまな「違い」を経験することでもある。
違う言葉、文化、医療システム、仕事環境。細かく言えば、実は医療の中身も違う。生まれ育った国での医者の仕事とはもう何もかもが違う。
その違いの中で、もう10年以上も医者を続けている。救急と病棟での勤務が8年、そして念願の家庭医となって4年目。
とは言え、いまだ順風満帆ではない。毎日が何かしらのチャレンジに満ちている。
大きくは英語の問題がある。僕の英語能力はかなり怪しく、患者さんの言っていることがよく分からないことがある。しかもよくある。もう一度英語の勉強を真剣にやり直した方がいいのはよく分かっているが、毎日大勢の患者さんを診て、何枚も書類を書いて、医学書を読んだりグーグルに世話になったり、医者もまたとにかく勉強を続けざるを得ない職業なのだ。とてもじゃないけど今更純粋に英語の勉強なんて…。
だが、人間は追い込まれていくと何とかするもの。
というわけで、僕はとても一生懸命に患者さんの話を聞く。聞かざるを得ないからだ。分からなかったら聞き直すし、分かったら確認する。先にこっちから質問するというのも手だ。絵を描く。質問票を使う。最近では、分からなくても慌てることなく、ほほ笑んだりする。なるべく相手の目を見て、あなたのことを僕は理解しようとしてるんですよという態度を示す。
そんなこんなが功を奏して、「あのドクターは自分の話をよく聞いてくれる」と思いがけない高評価が付いたりするのだった。
弱点は放っておけば弱点のままだけど、使いようによっては武器にもなる。視点を変えて時には開き直るのも手ですね。
(山内肇、オーストラリア在住家庭医)