<南風>「ゲゼル・マネー」と出会う


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 大学卒論を書き始めた1999年頃、調査途上であるネット掲示板に出会う。ジャーナリスト田中宇氏も参加するコミュニティーで記事投稿やコメントにはID・PWが必要、それは管理人からもらう。つまり、メンバーのみ参加可能。

 中心ネタは国際政治経済。議論内容が超ハイレベルだったのでどうしてもコミュニティーに入りたいと管理人に連絡を取ったら「今度、オフ会があるからおいで」と言ってもらい、メンバーとの交流を深めた。

 そして、その1人から革命的な話を聞く。ゲゼル・マネー。発行時には千円だが、使う度にスタンプが押され10%毎など価値が減っていく。10回使うと0円になるので、また千円分再発行される。別名スタンプ通貨。日本で知られたのは99年のNHKスペシャル『エンデの遺言』。『モモ』などで知られる童話作家の故ミハエル・エンデ氏が主人公で、彼はゲゼル・マネーを紹介、「将来、“日本”から、お金の問題を解決する方策が生まれてくるはず」。これが彼の遺言となった。

 このコミュニティーは、日本のゲゼル・マネー推進者、森野栄一氏とも交流があり、おかげで発明者のドイツ人起業家で経済学者シルビオ・ゲゼルのことも深く知ることができた。

 ゲゼルは第2次世界大戦を食い止めるため、世界恐慌時にこの革新的な金融システムを世に送り出し、導入したオーストリアの町ベルグルでは失業率はゼロになった。しかし、世界のリーダーたちは戦争で決着する道を選び、彼を牢獄に閉じ込めた。

 自然界の全てとそこから作られる私たちの食料や衣類は全て再生産され循環している。お金は、これと正反対で無尽蔵に増え続ける。この不調和こそがお金の問題の根源にあると確信した。解決策の模索を続ける中、新たなチャンスが訪れる。NY移住である。
(仲津正朗、OISTアントレプレナー・イン・レジデンス)