<南風>芝居が発信できること…


社会
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 劇艶おとな団の芝居創作は、作家と「何を発信したいのか、何を伝えたいのか」を話し合い決めている。アトリエ銘苅ベースを開設するにあたり、全国視察時、札幌コンカリーニョという劇場で『12人の怒れる男たち』を見た。

 作家はこの芝居に共感し、こんな作品を創りたいと言った。『12人―』はアメリカのテレビドラマから映画化・舞台化された法廷ものと呼ばれるサスペンス劇で、密室劇の金字塔と言われている。12人の陪審員が会議室という密室で殺人事件のことを論じ合う芝居。

 それを沖縄で演じるのであれば、アメリカの占領地から、日本に復帰するという新たな世替わりを迎える時、沖縄人は何を思い、何を願ったかを芝居にしたいと思った。そこには多様な考えを持った登場人物が必要。司会の新聞記者、有識者、復帰論者、独立論者、若者、主婦、老婆、文化人、本土人、この9人で復帰を論じ合う芝居。ここまで考えがまとまった時、団員と復帰について話し合うと、占領時代を知らない世代もいた。

 当時のことをいろいろ尋ねられ、経験者は「フェンスの下に穴を掘って基地の中に入って遊んだ」「えー」「薬きょうを拾って売りに行った」「本当ですか?」と盛り上がった。このやりとりが面白く、このシーンを取り入れる、劇中劇の構造を思いついた。こうして『9人の迷える沖縄人』は平成27年初演、28年鳥の演劇祭招聘作品、29年全国小劇場ネットワーク会議で再演と、全国の演劇関係者から称賛される作品となった。そして、令和2年ブラッシュアップし『9人の迷える沖縄人・50 years since then・』として再再演する。

 これからも県内・県外・海外へと、沖縄のリアルを伝える長く愛される作品になるだろう。
(当山彰一、俳優)