<南風>聴く力


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 学生時代、友人と海外旅行に出かけた。飛行機のチケットとホテルだけを予約し、付箋がいっぱいに貼られたガイドブックと学生時代に学んだ中国語を頼りに向かった先は北京。碁盤の目のように整然と区画整理された街は、車両は片側だけで5車線もあり、その外側に自転車専用道路、さらにその外側に歩道とかなり広い道路は渡ることすら一苦労。方向感覚が鈍い私は、目的地になかなかたどり着けず、諦めてタクシーに乗ろうかと歩いていると「1ブロック先を曲がればすぐだよ!」と地元の人が指さしながら教えてくれた。あと少しだ!と1ブロック先を目指す。が、歩いても歩いても曲がり角にたどり着かない。結局すぐそこだと思っていた1ブロック先は徒歩20分の距離。中国の広大さを身をもって体験した旅行だった。

 理解したつもりだったのに、肝心な情報が得られていなかったり、伝わっていると思っていても相手の受け止め方は違っていて、想像と違う結果になるということは日常生活でもよくある。立場や環境によっても捉え方は異なり、また直接会って話す、電話、メール、web会議サービスなど、どのツールによってコミュニケーションを取るかによっても受け止め方は変化する。

 相手とどうやって良好な意思の疎通を図るか。社会人としてスタートした頃、海外との取引を担当していた。仕事に関する知識も外国語にも自信がなかった私が緊急の連絡をする時、まずは電話で連絡し、言いたかったことを再度メールで確認、相手にもどう理解したかメールをもらうようにしていたことを思い出した。

 自分と相手が同じ絵を描けているかを注意深く観察することを心掛ける。これは勝手に次の展開を想像して、早合点しがちな私の課題である。

(山口茜、沖縄美ら島財団 首里城公園業務課長)