<南風>「破壊的なアイデア」と「実行力」


社会
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 起業家になると決めたはよいが、起業の方法など全く見当がつかない。ならば、修行するが上策と、コンピューターサイエンスへの知見が必須と直感し、ITベンチャーに転職、1社を経た後、Eコマース企業セブンアンドワイ(現オムニ7)の社長室に入った。実は、ここには一つの幸運が働いている。社長室長の三浦さんが、なんと干支(えと)と誕生日が私と全く一緒。しかも、三浦さんはマイクロソフトのITコンサルティングチームで2年でナンバー2になったほどのエンジニア。テクノロジーと起業の両方を学びたい私にとって、理想の環境だった。

 社長は、セブン―イレブン創業者の鈴木敏史氏の次男・康弘氏。高校時代に「第3の波」を読んでIT業界を志し、富士通のエンジニアを経て友人仲介で、孫正義氏と出会い、意気投合しソフトバンクに参画。その後、孫氏にセブンアンドワイの事業案を提案、子会社として99年に立ち上げる。

 創造力の高い経営者で、オムニチャネルをメディアが注目するだいぶ前の2006年ごろから考え出し、オムニ7として具現化した。最後、敏史氏引退に伴う騒動で退社となったのが残念でならない。

 私はここで約3年間、本当に理想の修行をさせていただいた。そして、新規事業の調査、企画、実行を学ぶ中、成功する起業家の二つの要件を理解する。「破壊的なアイデア」と「実行力」である。

 後者については、テックベンチャーの成功に技術力は必須と痛感した私は、鈴木さんと三浦さんに直談判し、開発部門に転籍させてもらいエンジニアになった。不慣れな仕事のため3日間徹夜したこともある。

 そして、前者は、外に学びの場を求め、後の私の創造力に圧倒的な影響を与えることになる二人のプロダクトデザインの天才と出会うことになる。

(仲津正朗、OIST アントレプレナー・イン・レジデンス)