<南風>葛藤の日々


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 「今日こそは早く帰るぞ」。教員時代は、毎朝自分に言い聞かせながら出社していた。しかし、いざ仕事を始めると、思いとは異なり計画通りに進まないことが多く、帰りたくても帰れない日々の葛藤がそこにはあった。

 専門学校日経ビジネスではクラス担任制を採用している。担任は、学習面のサポートだけでなく、学校生活における悩みや将来の進路についての相談など、精神面でも学生を支えていく役割を担っている。

 担任の業務は、朝のホームルームから始まる。10分と非常に短い時間だが、一日の始まりであり、最も重要な時間でもある。担任は、教壇に立つ瞬間から神経を研ぎ澄まし、クラス全体の雰囲気と学生一人一人の様子を観察し、異変を見逃さない。そして、直観的に感じたことを記憶しておくのだ。学生の授業態度や休み時間、放課後の様子をうかがいながら、声かけを行っていく。結果、声かけだけで解決することもあれば、必要に応じて面談を行うこともある。時には、集団での解決を意識させるために、クラスで話し合いの時間を持つことだってある。

 多くの場合、これらの対応は授業外の放課後の時間を使うことになる。内容もさまざまで、休退学につながるものもあれば、家族や友人、恋人との問題や成績の伸び悩みなど多岐にわたる。経験を積んだ大人からすれば大したことのない悩みでも、学生にとっては勉強が手につかないくらい一大事なのだ。時には、1人の学生の異変がクラス全体へ波及することもある。

 異変を感じつつも対応が遅れ、取り返しのつかない状況になった経験がある。あの日、もっと親身になって話を聞いていたら、結果は変わっていたかもしれない。学生の人生に関わる者として責任を感じながらも、計画通りに進まない自分との葛藤も抱えていた。
(島袋菜々子、日経教育グループ HRD labo OKINAWA取締役)