<南風>シリコンバレーの洗礼


社会
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 起業テーマは「キュレーション」。ここからはピンテレストやレディットなど大型ベンチャーが生まれた。2009年頃より、SNSのタイムライン普及によりネットは情報洪水状態。その問題を見て学生時代に助けられた会員制ウェブ掲示板がフラッシュバックした。あれをスケールさせることができないか?

 レディット似のプロダクトで2人の共同創業者と起業、現地最大イベント・テッククランチ2011に乗り込んだ。そこで5千億円のVCファンドを運用するビノット・コースラを見つけエレベーターピッチを仕掛け、見事、名刺をもらえた。オフィスでプレゼンできるチャンスの証(あかし)だ。深夜2時にアポメールを打診したら10分後に返事というスピード感。が、実際のプレゼン時、決定的な質問を受ける。「いいアイデアだと思うが、なぜ、君は自分がこのプロジェクトにふさわしい起業家だと思うのか」と。答えに詰まった。そして、話は流れた。

 シリコンバレーでは一つの投資テーマは2年で勝敗がつく。2年以内に強力なプロダクトと実績を出さないと生き残れない。100社近い競合との激しい競争によるストレスで就寝中に歯ぎしりが続き、奥歯を1本かみ砕いてしまった。

 貴重な学びが三つあった。シリコンバレーでは、愛している問題に挑まないと熾烈(しれつ)な競争に耐えられない。そして、チームには人種と性別を超えた多様性が必須。iPhoneも多様性あるチームから生まれた。更に、最強の仕組みがインナーサークル。ビノットら数百人の元起業家の投資家コミュニティーに認められた起業家にだけ成功の道が開ける。

 2012年、キュレーションに勝敗がつき出した頃、現地友人から衝撃的な話をもらう。「マサ、ビットコインは知っているか?」

(仲津正朗、OIST アントレプレナー・イン・レジデンス)