<南風>準備の時間


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 秋といえば、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋とさまざまな切り口で秋の楽しみ方が語られる。6月21日頃にある夏至を過ぎると日の出が少しずつ遅くなり、日が沈み始める時間は少しずつ早くなる。9月23日頃の秋分の日を過ぎるとぐっと日が短くなり、次第に夜の時間が長くなる。「夜の涼しさが気持ちいいので、灯りを照らして読書するにはいいものだ」といったのは中国の文人。心地よい季節にゆっくりと読書を楽しむのもいい。

 運動をするのにもいい季節であり、人にとって気持ちのいい季節は、植物にとってもいい季節である。植物が色づき、果物が実をつける。彩り豊かな景色が楽しめ、美しい景色を写真や絵などに切り取る。芸術に触れる機会が増える季節でもある。

 沖縄の秋は、日中はまだまだ暑さを感じるが、それでも朝晩の涼しさや日に日に長くなる夜の時間に季節の変化を感じる。せっかくの時間を有意義に過ごしたいと早々に準備した来年の手帳を眺めている。この1年を振り返りながら、これまでやってきたこと、学んだこととそのさらに先を考えている。

 何気ない経験や思いが、新しい知の世界へつながることがある。何も学んでこなかったと思う時も新しいテクノロジーやコミュニケーションに触れ、情報を吸収してきたはず。いつのまにか集まった情報が「やってみたいこと」につながることもある。そんなことを考えながら、頭の中に無数に浮かびジャグリングしている言葉を紙とペンで書きとり着地させる。じっくり、ゆっくり自分と対話してみる。

 ある調査によると「○○の秋」といって思い浮かぶもので最も多いのは「食欲の秋」とのこと。秋の夜長、ワインか秋の果物をお供に秋の時間を味わってみたいと思う。
(山口茜、沖縄美ら島財団 首里城公園業務課長)