<南風>故郷安田区の良さ


社会
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 安田区は国頭村の東部にあり、人口180人の風光明媚(めいび)な小さな集落で、「ヤンバルクイナの郷」としてもよく知られている。また、国の「重要無形民俗文化財」として指定を受けている「安田のシヌグ」も有名である。

 区の行政組織は「民主制度」「議会制度」を参考にし、区長および議員を選挙し、その区長や議員が区民に代わって区行政のかじ取りと運営を行っていく手法を取り入れている。重要案件はすべて評議員会での議決を得て、最高議決機関の区民総会で承認を得る。

 私は1980年(28歳)に生まれ育った安田区へ戻り居を構えた。若者が少なく、すぐに区の評議員として活動する機会を得た。ほとんどの評議員が親子ほどの年齢差のある大先輩であった。会議は日常生活に係る案件が多く皆必死で激論をしていた。会議終了後は必ず飲み会があり、そこでも激論が再燃しアルコールの勢いで取っ組み合いのけんかもよくあった。私も先輩方を相手によく激論をしたが、無鉄砲なことをして先輩方にたしなめられたりもした。

 特に区長や国頭村議を経験された古堅昇さん(故人)には区の歴史の変遷、行政の在り方、日頃の活動や酒の飲み方までも教えてもらった。弟の古堅実吉さん(元衆議院議員)は区民からとても慕われていて、先生と呼ぶ人はおらず私は「実吉兄さん」と呼んでいた。実吉さんからもよく激励を受けた。衆議院議員の現職で多忙な中でも区の行事には必ず参加をして私たちを激励してくれた。

 安田区の良さは、諸先輩方から叱咤(しった)激励を受けながら民主主義のルールにのっとり議論は皆が納得のいくまで行うが、区民総会で決定すると、すべての区民が同じ方向で一致団結して行動を共にすることである。そのことが、地域力を生み出す最大の原動力になる。
(比嘉明男、日本郵便沖縄支社長 県パークゴルフ協会連合会長)