<南風>紙の本と電子書籍


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 幼い頃から、外で遊ぶよりも本を読むのが好きで、家の書棚の前に陣取り、子ども向けの日本の昔話のシリーズ本や伝記、何十冊にも及ぶ百科事典などを読んでいる時間が楽しかった。ロシア語の通訳者でエッセイストの米原万里氏の「不実な美女か貞淑な醜女か」を読んで語学に興味を持ち、ユン・チアン氏の「ワイルド・スワン」の影響で隣の大国中国に興味を持ち中国語を学んだ。

 本は、私の世界を広げてくれる大切な存在である。さまざまな分野の知識が集結した書店は課題解決の場所であり、何かもやもやしたり、悩みや考え事から抜け出せない時に意識的に足を運ぶようにしている。話題の書籍コーナーやビジネス本から、パソコンや美術・芸術、社会科学、医学など普段は足を踏み入れない分野もお散歩をするように歩いてみる。書籍のタイトルを眺めていると解決の糸口が見つかることも多い。

 最近は、気になった本や知りたい情報をすぐ読むことができる電子書籍もよく利用する。ブルーライトが睡眠の質を妨げると聞いてからは極力スマートフォンを置き、寝る前の明かりを落とした部屋でも十分読むことができる電子書籍で読書をする。また、軽くて持ち運びが楽なので、長時間の移動や外出先での空き時間でちょっと読みたいときにも重宝している。気になる箇所にマーカーを引いたり、メモを書き込むなど紙の本のように使うことができ、その内容をメールに転送して自分だけの読書記録にすることができる機能は電子書籍ならではと思う。

 昔からの慣れ親しんだ紙の質感を感じながら読む醍醐味(だいごみ)と、大量の書籍を小さなデバイスで持ち運び、その時の気分に応じて読みたい本を選べる安心感と便利さ。新しい世界とのつながり方も広がり、これまで以上に楽しい読書時間を過ごしていきたい。
(山口茜、沖縄美ら島財団 首里城公園業務課長)