<南風>クイナの保護活動 パート3


社会
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 1800羽が生息していると推定されていたヤンバルクイナが700羽まで激減し絶滅が危ぶまれる中、当時の上原康作国頭村長が立ち上がった。ヤンバルクイナを保護するシェルター設置の予算として約6千万円を議会に提案した。当然一部議員および村民からは予算の無駄遣いとの声も上がっていたが、上原村長は丁寧に議員の皆さんの了解を取り付け、2006年3月26日、安田エリアにヤンバルクイナを外敵から守る「ヤンバルクイナ保護シェルター」を設置した。

 広さは13万7千平方メートル、高さ約2・7メートルのフェンスで囲まれたシェルターは、マングースや野生化したネコなどからの捕食を防ぎ、ヤンバルクイナを保護するほか、生態研究を目的に設置された。周囲約1・9キロメートルのネットを張る作業の日は、村民のほか、中南部からも多くのボランティアの皆さんが駆け付け、黒いネットを支柱と支柱の間に張る最後の作業を大雨の降る中懸命に実施した。

 その模様がマスコミに大きく報道され、それをきっかけに世論の強い後押しがあり、国、県の動きが一気に加速した。マングース対策として中南部からの北上を防ぐため、北上防止柵(SFライン)を設置した。環境省はヤンバルクイナの危機的状況に備えるため10年、「ヤンバルクイナ飼育繁殖施設」を安田エリアに設置した。

 これまでの安田区や国頭村の地道な取り組みが世界自然遺産登録に向けての礎になっていると信じてやまない。企業、行政、組織のトップの決断はとても重いものがある。「前例にとらわれない」「決断力」が組織改革につながり、世の中を動かすことになる。13回の執筆で個人の経験を中心とした内容であったが、私自身が勉強になり数多くの激励を受け、読者の皆さんに感謝を申し上げてお礼とします。
(比嘉明男、日本郵便沖縄支社長 県パークゴルフ協会連合会長)