<南風>依存症者の回復に必要なもの


社会
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 弊社レジリエンスラボは依存症回復支援を行っており、私を含めスタッフは全員生きづらさの当事者で、依存症、ひきこもり、発達障害などを抱えつつ、回復してきた。

 その経験を強みにして、依存症者のためのグループホーム運営、カウンセリングや回復のための情報発信などを行っている。

 依存症者の多くは、依存行為を続けるために、家族や親しい人にさえうそを塗り重ねる。ギャンブルで作った借金を隠し、それを返すために家族や友人にうそをついて金を工面する。「飲んでない」とうそぶきながら飲酒運転で職場に向かう。勤務中にペットボトルに隠し入れた酒を飲む。そんな自分のうそと秘密がいつバレるかとびくびくしながら暮らしているのだ。

 それは家族も同様だ。自分の夫、妻、子どもが日に日におかしくなっていくのを、周囲に気づかれないよう隠しながら生活している。世間の目を恐れ、時には本人の失態を尻拭いしながら、周囲に助けを求めることもできず、だんだんと孤立していく。

 依存症からの脱却は「やめ方を知る」だけでは十分ではない。さらに必要なのはうそと秘密で覆ってきた自分を「正直に打ち明けられる仲間」を作ることだ。心配事や不安、ストレスを依存行為で紛らわせるだけの生活をやめ、新しい生き方を模索する。この一生の課題に一人で取り組むのは荷が重すぎるからだ。

 「依存の反対は自立ではない。依存先を増やすことだ」といわれている。やめ方を知り、先に実践している依存症者たちは最も健康的な依存先であり、仲間である。家族も当事者も「このままでは生きていけない」と行き詰まり、現状を変えたいと願うならば、勇気をもって仲間の手をとってほしい。孤独に代わる「癒やしと共感」が、そこにはある。

(上原拓未、レジリエンスラボ代表 精神保健福祉士)