<南風>依存症に隠れた生きづらさ

 弊社では依存症支援の一環として当事者・家族向けにカウンセリングを行っている。

 半年前、一人の男性から連絡が来た。飲酒による度重なるトラブルで悩み、それでも自分をコントロールできないことに危機感を持ち、カウンセリングを希望していた。当初は「酒をやめ続けるにはどうしたらいいか」が彼の主な関心事であったが、幼少期から父親の酒害・虐待があったこと、現在も亡き父への怒りと恨みの渦中で苦しんでいる背景が徐々に明らかになっていった。

 そして父親への消せない怒りと、親にも愛されなかったという心の穴をアルコールで埋めることで現実逃避の手段にしていたことに気づく。カウンセリングの中では「弱音を他者に話す」トレーニング、そして「(弱い自分を)受け入れてもらう」成功体験を積み重ねることができる。

 他者を信頼できずに育ってきた彼にとって、たった一人でも他者に受け入れられたという安心感や自信を得たことは大きい。それからは隠していた依存について家族と話し合うことができるようになった。また、同じ依存の問題を抱えた仲間の前で本音を話す自助グループにも通い始めたところで、半年間のカウンセリングを終了した。

 最後に彼は「思い出したくもない過去を振り返る体験はつらかった。でも上原さんの言った通り問題を解決する答えでしたね」と握手を求めてきた。

 「ボトル(酒)は象徴にすぎない」という言葉がある。自身の中に隠れた未解決の問題に気づき、取り組むことこそが根本的な解決であることを伝えている。彼がそのことに気づいたことでカウンセラーの役目は終わった。これからは家族や仲間の伴走とともに回復の道を歩んでいくことをうれしく思いながら、別れのあいさつをして見送った。
(上原拓未、レジリエンスラボ代表 精神保健福祉士)



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