<南風>どこに住んでいても


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 市町村格差はさまざまな場面で起きている。子ども医療費の助成もそうだ。

 医療費を公費で負担する「子ども医療費助成事業」は子どもの入院・通院にかかる費用のうち県が市町村に2分の1を補助する仕組みである。この助成事業の対象となる年齢が、市町村によって就学前・小学生卒業・中学卒業・高校卒業とかなり差がある。県の調査によると困窮世帯の3割が「自己負担金を支払うことができない」などの理由で病院にかかることを控えたことがあるという。

 千葉や沖縄でトレーニングをしているパラリンピック選手の秦由加子選手は中学生の時に右膝の下に痛みを感じ、ご両親に相談すると「念のため」と病院へ。骨肉腫という骨のがんであることが判明した。すぐに膝上で切断することが決まったそうだ。早期発見と適切な治療法を選んだおかげで、彼女はいま義足のパラトライアスリートとして活躍を続けている。骨肉腫のような進行が非常に早い病気では、自己負担金が払えないから病院に行けないという市町村格差が命の格差につながりかねない。

 2022年には県全体の施策として中学卒業までが対象となる方針が決まったが、窓口で保護者による立て替え払いの必要がない現物給付となるかどうかも市町村によって対応が異なる。一時的に立て替えることが負担という家庭も多くあるはずで、この格差もぜひ埋めていくように検討していただきたい。

 沖縄以外で中学卒業までを対象とするのは7都県なので全国的に見ても手厚い支援だが、子どもが多い沖縄では静岡や鳥取のように高校卒業まで対象となると理想的だ。さらにこの事業は各都道府県負担の取り組みなので、この格差をなくすためにも国の事業・公助となるべきだ。「念のため」病院に行くことが誰でも当たり前になってほしい。
(富田杏理、おとなワンサード代表)