<南風>依存症回復者は語る


社会
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 弊社は依存症者のためのグループホームを運営している。スタッフは支援者であると同時に発達障害や依存症の当事者でもある。その一人に、薬物・アルコール依存症のハルさん(48歳・男性)がいる。いつもユーモアたっぷりなムードメーカーで、彼がいるとその場が明るくなる。頻繁に起きる入居者間トラブルにも「僕もこんな時あったな。ひどいもんだったよ。わかるなあ」と寄り添う。

 たしかにハルさんの人生はひどかった。19歳で薬物にハマって、友達もいない。話す相手は薬の売人くらい。謎の組織から監視されているという妄想で部屋の壁と床をチェックして1日が終わる。親からだまし取ったお金で薬物を買う。夜は限界まで酒と睡眠薬を飲んでなんとか眠る。28歳ごろから夏は毎年入院で、精神科病院の入退院を10回繰り返した。

 そのハルさんが39歳で薬物が止まり、42歳で酒も止められた。そして先月、断薬・断酒を継続して5年のバースデー(記念日)を迎えた。死に向かう下りのエスカレーターから自力で這(は)い上がった彼の姿は私たちに希望を与えてくれる。私たちは、本来「自分で自分を回復させる力」を持っているのだと。弊社の社名でもある「レジリエンス(回復力)」。これを発揮するために必要なことはなんだろうか。

 彼は言う。

 「今はとても楽しく過ごせてる。回復のプログラムと出会い、共に実践する仲間がいる。このプログラムを新しく来た仲間に伝えること、その仲間が回復していく姿を見ること。それが自分自身の回復を続ける鍵だし、最高の日々だって思ってる」

 「今苦しんでる仲間に伝えたい。やめたい、やめようと思ったら回復は始まっている。どうか仲間に会いに来てほしい。あなたはひとりじゃないよ」

(上原拓未、レジリエンスラボ代表 精神保健福祉士)