<南風>基地と水の安全と子どもたち


社会
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 ある日、9歳の娘と散歩していたら小さな湧き水のたまりがあった。水遊びしたいというので、暖かいししばらくなら良いよと答えた。小一時間ほど水中に手だけ入れて小魚を追ったり水の感触を楽しんだりしていた。帰ってから家族に水遊びをしたことを話すと「普天間基地の下に位置するから水遊びには適さない」と言われショックを受けた。

 SNSにアップした、のどかな水遊びの写真にも宜野湾に住む先輩からもすぐに連絡があり、「基地からの汚染の可能性が高いから水遊びも避けた方が良い」と教えていただいた。透明に澄んでいて臭いもなく小魚やザリガニもいて何の問題もなくぱっと見は問題なさそうな水だったのに。

 一度ちょっとだけ水遊びしたくらいでは、すぐに健康被害は現れないだろう。いくらなんでもそこまでひどく汚染されていないと信じたい。

 沖縄の美しい海が埋め立てられ奪われていくことに怒り、できる限りの行動もとってきたが、まさかこんな身近な水の安全まで脅かされているとは知らなかった。

 昨年4月、普天間基地から泡消火剤が流出した時に初めてPFOSについて知った。普天間基地との位置関係から水遊びをさせるべきではないと考えられるほどではなかった自分が情けなくなった。

 沖縄で低体重児が多く生まれていることと、米軍基地からの水の汚染の関連性をもっと深く調べるべきだと京都大学の教授からの指摘もある。基地があることによる爆音被害は日常的に分かっていたが、水の安全すら保証されていない。音に邪魔され、空から落ちてくる恐怖感と同居し、さらには水にまでおびえないといけないのか。

 恐怖と隣り合わせの生活を子どもたちの世代まで引き継がせてはいけない。
(富田杏理、おとなワンサード代表)