<南風>依存症支援の鍵はどこに


社会
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 弊社は依存症者のためのグループホームを運営している。一方で私自身も生きづらさを抱えた当事者である。そのため、当事者主体で運営している地域の自助グループに参加しており、そこでは厳しい現実を目の当たりにする。

 親の年金で生活し、日中から飲酒して1日を過ごす依存症者と、それを止められない高齢の両親。いくつもの病院や相談機関を回ったが「本人にやめる気がないとなにもできない」と言われ、何年もそのままになっている。

 また、飲酒が止められない依存症者を病院受診に連れて行く支援者と、飲酒状態では受診できないと帰す病院。依存症者にとって、酒が抜けて初めて受診できる、というのは、「がんが治ったら受診して」と言われることと同じである。

 血を吐くまで飲み続け、自ら入院を希望した依存症者もいた。このとき、自助メンバーは受け入れてくれる病院や施設を探し回った。その1人はこう語る。

 「数年間やめていた仲間が再飲酒し、本人からSOSを受けました。頼れる身寄りも少なく、命に関わる連続飲酒だったのですぐ入院先を探しました。病院・施設・福祉10箇所くらいに電話したでしょうか。しかしどこも飲酒状態での受け入れは拒否で、絶望しかけました。最後に親身に聞いて下さる所が見つかり、緊急入院にこぎつけました。緊急時に入院できる病院、リハビリ施設、そして地域で長期的な回復と成長を支えるわれわれ自助グループ、それぞれが連携する体制作りが必要だと思います」

 依存症者は退院後、地域に戻ってからが正念場になる。数年やめていたとしても、命に関わる再飲酒の危険は常に隣り合わせだ。普段から各関係機関と連携を取り、緊急時に協力しあえる体制作りが必要だと痛感している。

(上原拓未、レジリエンスラボ代表、精神保健福祉士)