<南風>依存症者とどう関わるか


社会
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 弊社は依存症支援に特化したサービスを行っており、そのうちの一つに自助グループ形式ミーティングの運営がある。そこでは当事者同士が集まって、自分の依存問題や体験について語る。

 依存が止まり、働きながら参加している人もいれば、今まさに飲酒をやめられず、苦しみながらすがる思いで来ている人もいる。そこに集う人たちを見ていて実感するのは、回復初期の段階では、「周囲が本人の依存問題について知っていることは大きな助けになる」ということだ。

 「お酒が飲めない体になった」と宣言することで周囲の理解を得、自分自身への抑止力にする。職場で不祥事を起こした時に、「自助グループに通うことを条件に雇用を継続する」と本人の努力を見守る決断をした会社もあった。本人が依存問題に気付いていなくても、周囲がそれに気付き、さらに正しい知識を持っていたことで回復につながったこともある。

 職場で隠れ飲みをしていた当事者に対して「それは病気だと思うよ」と会社の上司が本人を同伴して自助グループに来てくれたのだ。一方で、周囲が依存症に対して正しい知識がないことで、当事者の問題を家族に押しつけてしまうケースもある。

 会社が「母親が責任を取るべきだ」と借金の肩代わりを要求。しかし、尻拭いは本人が責任を取り、病気である自覚を持つというチャンスをつぶしてしまうことになり、事態を悪化させる。

 このように本人や家族だけでなく、周囲が依存問題についての正しい知識や対応方法を知っているか否かは、早い段階で自助グループや支援につながれるかどうかの大きな岐路になる。今後、社会全体が当事者を見守る目となり、依存症の早期発見、介入が進むことを切に願っている。

(上原拓未、レジリエンスラボ代表、精神保健福祉士)