<南風>「処方薬」と「依存」の関係


社会
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 弊社は依存症支援を行っており、スタッフはみな生きづらさを抱えた当事者でもある。処方薬依存回復者の「ガッキ」(男性38歳)もその一人だ。

 彼の父親はゲーム依存症で暴言癖があった。そのため幼い頃から父親の顔色をうかがい、機嫌をとるのが日常だった。

 同じ頃、学校では壮絶なイジメに遭った。周りに合わせ、自分を押し殺し続けた結果、高校生でうつ病を発症。初めて病院からもらった薬は、どうにもならなかった不安や緊張を吹き飛ばしてくれた。それからは何をするにも処方薬が手放せなくなった。親や世間から認められたくて、薬で自分をごまかしながら仕事だけは続けていた。しかし身も心もボロボロになり、2回の精神科入院と5回の自殺未遂を繰り返す。

 気付いた頃には、薬をやめようとすると離脱症状が出てやめられなくなっていた。しかし当時の主治医からは「処方薬に依存性はない。やめられないのはあなたの問題」と一蹴された。

 その後、薬物依存専門のカウンセラーに出会う。カウンセラーは「依存症は意思の力ではどうにもならない。正しい知識と対策を持って初めて回復できる」と教えてくれた。

 そこから彼の回復は始まり、今年で断薬8年になる。現在は支援者となって、依存症当事者へ回復のノウハウを伝えている。

 処方薬の中には、長期に服用していると、逆に不安や焦燥感、鬱(うつ)を増大させるものもあり、依存症になる危険性もある。しかし当事者も、そして医療従事者ですら、処方薬依存症であることに気付かず支援につながれていないのが現状だ。

 ガッキは語る。「うつ病を治すためにすがる思いで飲んでいた薬の後遺症は未だに僕を苦しめています。処方薬は諸刃の剣だということを心に留めて、適切に付き合ってほしい」

(上原拓未、レジリエンスラボ代表、精神保健福祉士)