<南風>他者とのつながりで癒す依存の病


社会
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 弊社のメインの活動領域である「依存症」、それは誰の中にもある「生きづらさ」が表面化した病であることについて発信したい、との思いで始めたコラムも今回で最終回である。

 掲載されるたびに依存に悩む家族から相談が舞い込んできた。自分や家族の話のようだ、と共感を示してくださる方も多かった。周囲の目を気にして誰にも言えず、悩んでいる人はたくさんいる。

 特に沖縄はアルコールだけでも依存症を疑われる数は8万人を超えており、県内の成人の10人に1人は依存症予備軍、という計算だ。つまり私たちの周りに一人はいる、酒癖が悪い親戚のおじさん、何度注意しても飲酒運転をやめない友人、二日酔いで欠勤・遅刻を繰り返す同僚の面々は、「依存症」である可能性がある。

 この病気の影響力は大きく、症状が悪化するにつれ本人だけの問題にとどまらなくなる。会社の金を横領、飲酒運転での事故、傷害事件、DVなど犯罪行為に発展し、多くの人々を苦しめるのだ。これまで「依存症」にまつわるさまざまなエピソードを書いてきたが、この病の根幹は長年の「孤独」と「他者への不信感」である。

 私たち「健常者」の多くも仕事や人間関係で不安や生きづらさを抱えながら生きている。その生きづらさがあまりにも大きく、耐えがたくなったとき「依存症者」の側になる可能性は誰にでもある。

 単に「だらしない、意思が弱い人たち」ではなく「病気かもしれない」「自分も同じ環境ならこうなっていたかもしれない」と周囲の意識が変わることで、より早く支援につながることができる。周囲の理解は、本人の回復を後押しし、家族や身近な人たちへの被害を食い止める。「孤独の病」をこうしたつながりの中で、みんなで癒していく。そんな社会を目指したい。

(上原拓未、レジリエンスラボ代表、精神保健福祉士)