<南風>カサブランカのように


社会
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 35歳、2人目の息子が生まれた日、私は人生最大の転機を迎えた。

 産まれてすぐに「自立できない」と医師から告げられ、目の前が真っ暗になった。息子のこと、これからのことが心配でたまらないのに、体調を崩して思うように動けない。そんな空白の時間が数カ月も続いた。

 そんな私に力を与えてくれたのが、子どもたちの成長と20代から続けている生け花だ。できないことがあっても笑顔で何度もチャレンジする息子の姿を見るうち、自然と心は決まっていた。花の世界で生きよう、大切な人たちを守れるようになろう。

 2011年、余白の美を生かした独自のスタイルで、フラワーアーティストとしてスタート。人と人が互いに照らしあう場所という願いを込め、株式会社アイテラスを創業した。

 久高島を臨むアトリエで小さなレッスンを開くことから始めて10年。気が付けば、フラワースクール「Flower life Design Ai」やアートイベントを主宰し、アーティストとして、花を使った大規模な空間演出なども手掛けるようになっていた。

 現在は、化粧品メーカーやホテルの装花、和の世界観を生かしたオリジナル作品の販売などもおこなっている。華やかに見える世界の舞台裏は地味な作業と緊張の連続だ。徹夜でデッサンを描いたり、急な設計変更で数百本の花が足りなくなりその場で作品を作り直したり。さまざまなハプニングは今となっては良い経験であり、どんな時でも、花と家族が私の原動力だ。

 カサブランカの花言葉は「雄大な愛」。大切な人たちを包み込む存在でありたいと願いながら、今日もアトリエに香り高い花をいける。

 このコラムでは、つたないながら、花と向き合う中で感じたことをつづっていきたい。
(宮平亜矢子、フラワーアーティスト)