<南風>誇れる「寛容の精神」


社会
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 沖縄に移住して16年を迎えた。生まれも育ちも横浜で、沖縄に初めて訪れたのは1991年、中学3年の修学旅行。空港に降り立ち、白いコンクリートに反射する太陽のまぶしさと南国の木々や街並みに異国情緒を感じて気持ちがたかぶったのを覚えている。

 中高は神奈川県の空手強豪校・山手学院中学高等学校に在籍していた。全国大会では沖縄代表校名や選手名の珍しさが印象的であるとともに、迫力ある型の演武に目を奪われた。私は組手選手だったので型に対する造詣は深くなかったが、彼らの演武に沖縄空手が文化として現在に受け継がれていることは素晴らしいと感じたものだ。

 客室乗務員となり沖縄路線に乗務するようになると、高度4000フィートから見る海の青と緑のグラデーションの美しさに感動した。本土と異なる気候で独特の文化を持つ沖縄に魅力を感じ大好きな場所となった。

 そして縁あって沖縄に嫁いだ。横浜から沖縄へ、客室乗務員からプロボクシングジムのマネージャーへ、と全く土俵の異なる世界に飛び込んだ。もちろんさまざまな戸惑いや葛藤はあったが、仕事や子育てをする中で周囲の人々に助けられて今がある。新しい土地で新たな人間関係を築くことは、その土地の文化や人を理解し、自らを受け入れてもらうということ。沖縄生活が長くなる過程で、私なりに理解した人付き合いの特徴がある。

 この土地には人を受け入れる「受容」、人を許す「許容」の文化があると思う。総じていえば「寛容さ」を備えているということ。それは交易国家としての歴史と島嶼特性である限られた土地と人の中でうまく社会を回していくために育まれた付き合い文化なのだろう。多様性の時代と言われつつ、現代社会で希薄になっている寛容の精神は、沖縄の誇れる特性そのものである。

(平仲絢子、平仲ボクシングスクールジム マネージャー)