<南風>奇跡的な確率


社会
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 私事で誠に恐縮ですが、昨年7月に長男の結婚式を執り行いました。

 コロナ禍でもあり多少の不安はありましたが、結婚式場は感染対策が徹底されていました。おかげさまでゲストの方からも「安心して参加することができたよ」と言ってもらえてうれしく、また父親として大いに安堵しました。

 ある会社の「結婚トレンド調査2019」によると、近年の新郎新婦は結婚式の意義について「列席者に感謝を伝える場」「人生を振り返り、生き方を再認識する場」と捉えているようです。

 コロナ禍に親という立場で結婚式を体験することで、改めて「同じ場に人が集まること」「感謝の気持ちを伝える場」の大切さを実感しました。

 考えてみれば、すべての結婚は奇跡的な確率で生じるものです。つまり「有難い」ことなのです。だからこそ、結婚式場という「儀式の場」において、縁によって集った多くの人たちと一緒に体感してこそ「いま、自分たちが生かされていること」への深い感謝の念が沸き上がるのではないでしょうか。

 結婚式に限らず、すべての儀礼は、自分の人生観を深め、幸せになるためにするものなのです。

 また、自分の人生にとってかけがえのない家族が、一緒に喜びを分かち合うためのものでもあると確信しています。その意味で儀礼文化とは、ふれ合いの文化、家族愛の文化ともいえましょう。

 いま、こんなに便利になった世の中で、私たちは本当の意味での豊かさを実感できているでしょうか。当たり前として意識しない人とのご縁こそ「こころ」を豊かにしてくれるのです。

 私たちの生活スタイルに合わせて、結婚式のスタイルが変わることはあっても、「儀式」そのものがなくなる時代はやってこないでしょう。
(佐久間康弘、株式会社サンレー代表取締役社長)