<南風>「YES」


社会
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 チャンスは、突然やって来るものだ。無理だと思うような仕事が飛び込んだときでも、オファーを断らない選択をしている。

 たとえ失敗したとしても、やらないで後悔するよりは、経験しながら一歩ずつ歩んで行きたい。自分の気持ちにうそつかず「YES」と信じる方向に、まっすぐと進むことが大切なのだと。そう思える出来事があった。

 ある夏の日、知人を通して東京から思いがけない仕事がやってきた。依頼内容は、国内外のメディアを招待しての、新作の発表会とアフターパーティーの空間装飾。沖縄の老舗ホテルと無人島がメイン会場となる、南国の花材を使った大胆な演出は、これまで経験のない私にとって、未知なるチャレンジだった。

 遠く離れたクライアントに、ブランドの世界観を意識しデザインするも「イメージが違う」と、なかなか認めてもらえず、必死で提案を繰り返す日々。それに追い打ちを掛けるように家族が体調を崩し、自分の無能さに悲しくなって、弱音を吐いたこともあった。

 それでも諦めず、答えを求め、現場に足を運び続けた。そして、前日からプレッシャーで眠れず臨んだプレゼンは、無事に一発OK。

 大勢のゲストを迎えた本番は華やかにフィナーレを迎えた。クライアントから、「あなたを信じて良かった」と、笑顔でうれしい言葉をいただき、目頭が熱くなったあの日のことを忘れない。

 この話にはオチがあって。緊張のあまりアシスタントも連れず1人で会場に向かった(無謀な)私。クライアントチームからは、南国のフラワーアーティストは怖いもの知らずだと思われてしまったそう…。今となっては笑い話だが、自分の可能性を信じ、まずは一歩前へ。そうすることで、まだ見ぬ世界の扉を開くことができるのだから。
(宮平亜矢子、フラワーアーティスト)