<南風>ちょっとしたきっかけを生かす


社会
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 東京五輪の熱戦に連日くぎ付けになっており、原稿が掲載される頃には佳境を迎え、どんなドラマが生まれているかワクワクしている。五輪で活躍するスター選手にもスポーツを始めたきっかけがあったはずで、皆さんはどんなことが趣味やスポーツを始めるきっかけになったでしょう?

 というのも、スポーツ庁はコロナ禍で健康への意識が高まり、ジョギングや体操などの実施率が高まったと報じたが、一方で部活動や試合ができず、スポーツ活動に加わるきっかけや継続する機会が減少しており、スポーツに参与する人の減少が危惧されている。コロナ禍以前からスポーツ離れは先進国スポーツ界の大きな課題でもある。

 スポーツへの参与には個人の特性、重要な他者、社会的状況の要因が関係し、きっかけには重要な他者、つまり両親や指導者、友人、兄弟や有名選手などに勧められたり、認められたり、憧れたりすることが重要と言われる。あなたの一言が背中を押すのである。

 プロウインドサーフィンの世界王者だったビヨンはインタビューに「日本でも夏の休日には何万人という人がビーチに行くだろう。5千人のセーラーが5千人の友人に『やろうよ』と誘えば、毎週5千人のセーラーが誕生する。僕は友人に必ず言っているよ」と答えていた。ウインドに限らず、スポーツや趣味の楽しさを分かち合うには、こうしたちょっとしたきっかけづくりが大切なのだと思う。

 もちろん、やってみて向いているか、これだと感じるかは個人の特性もあるし、継続するには社会的状況も関係する。そして興味を持ったら気軽にやってみる好奇心を持つことが、スポーツ人口を増やし、元気な社会形成につながると考える。五輪で感じる多くの感動もきっかけになるはずで、今日から何か新しいことを始めてみましょう。
(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))