<南風>花のチカラ


社会
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 コロナ禍で世の中が一変してから、久高島と海を眺める主宰のフラワースクールには、自粛や制限のなかった数年前より多くの生徒さんが足を運んでくれるようになった。皆、花と向き合い癒やしの時間を楽しんでくれている。

 花には心身のバランスを整える効果があると思う。視覚・嗅覚・触覚など五感を用いて花に接することで、脳を刺激し活性化する。特に命が宿る生の花には、触れるだけで日々の疲れを取ったり、ストレスを和らげたりしてくれる力があるように感じる。

 花弁のプニプニした柔らかさや、葉のツルっとした滑らかさ、枝の力強さなどの指先の触感。フワッとしたフローラルな香りや、色とりどりの花を眺めているだけで、自然と優しい気持ちになれる。「癒やす力」「応援してくれる力」「笑顔にしてくれる力」。私自身、人生のあらゆるシーンで花に助けられて来た。

 ある夏の日の出来事。度重なる緊急事態宣言で仕事に支障が出てしまい、気持ちが滅入っていたところに、近所のマダムが両手いっぱいの花を届けてくれた。それは、長くスッと伸びた茎の先に縦に連なるように咲く、白のチューベローズだった。月光が美しかったその夜、花たちの魅力的な香りが部屋いっぱいに広がり、不思議と心が満たされ次へと進む勇気をもらった。

 チューベローズは暗くなると咲き出し、その濃く甘い香りはストレスや緊張から解放され明るく前向きな気分にしてくれる働きがあると言われている。心折れるような時でも、花を感じることで気持ちをニュートラルにできた瞬間だった。

 こんな時代だからこそ、巡る季節の花々に触れ五感を使い、心から穏やかな日々を過ごすことを意識したい。毎日が優しさに包まれ笑顔で過ごせると願いながら。
(宮平亜矢子、フラワーアーティスト)