<南風>食トレで胃腸を鍛える


社会
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 ボクシングは減量を伴うスポーツ。試合前日の計量に合わせて体を絞っていく。平均して5kgから7kgの体重を落とすが、重量級になると10kg近くの減量を行う選手もいる。計量後は3kg程度のリカバリーを行う。選手によっては一晩でそれ以上に体重が増加することもあり、短期間で体重が大きく増減することは、体、特に胃腸への負担が大きい。体重の増減を試合の度に行うわけだから、その負担に耐え得る日頃からの身体づくりは欠かせない。

 ボクサーは1回のトレーニングで2kg近く体重が落ちる。それだけハードなトレーニングを行うためには、減量中であっても十分なエネルギーが必要だ。極端に食事量を減らしすぎるローカロリーのものばかり摂取するなどは逆効果。ガソリンがないと車が走れないのと同様に、エネルギーが不足すれば体は動かない。その上、体は筋肉を燃焼させてエネルギーを補おうとする。集中力の低下からけがのリスクが高まるなどの悪影響も考えられる。

 しっかり「食べる」ことは、質の高いトレーニングを維持するために必要不可欠。そして同じ「食べる」でも栄養をどれだけ効率的に吸収するかは、個人の胃腸力によって異なる。体は、口内で食べ物を咀嚼(そしゃく)して唾液を分泌させ、胃腸の働きを活発にすることで栄養の吸収率を上げる。1日3回の食事は胃腸を鍛える機会。そしてこれこそが「食事トレーニング」なのだ。

 胃腸は体の中心に位置している。筋肉は鍛えられても内臓は鍛えられないと思いがちだが、私は胃腸を鍛えることで体幹が鍛えられると考えている。腸は脳と密接につながりがあり、腸内環境が良いとメンタルも安定するといわれている。胃腸の強さはフィジカル・メンタルの強さに通じており、特にスポーツ選手は「胃腸を鍛える」ことを意識するようお勧めしたい。

(平仲絢子、平仲ボクシングスクールジム マネージャー)