<南風>海から陸を眺めてみる


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 秋の空気に変わってきましたが、まだまだ海で遊べる気候。この夏、ボードの上に立って一寸法師のように1本のパドルをこいで水面を進むサップ(SUP=スタンドアップパドルボード)を見ましたか? 海の上に立つことはサーファーやウインドサーファーの特権で、ある程度練習をしないと難しかったが、サップは適切な用具を選び、こぎ方を覚えれば簡単に沖に出られ、人が海に出るハードルを下げた素晴らしいレジャースポーツだと思う。

 岸から眺める青い海や海に沈む夕日にはもちろん感動するが、サップを使えば海側から陸を見る視野が簡単に手に入り、普段見ている街や海岸線を全く違った角度から見ることができる。昨年、指導者協会の仲間とサップのテキストを出版する際にも、レースやサーフィンに加え、ボードの上で行うヨガやつりなどを紹介したが、他のレジャーの要素を取り込んで多角的で多面的な幅広い広がりを見せている。ただ沖に流されたり、救助されたりする話を耳にするようになった。海での活動が身近になった分、怖さや危険もある。

 「板子(いたご)一枚下は地獄」という船乗りの言葉があるが、穏やかな海でも、船の底板をはずしたら沈んでしまう。つまり危険と隣り合わせで常に安全に対する意識を持たないといけないという戒めで、楽しいレジャーであっても緊張感を持つ必要がある。始めるにはテキストやスクールで基礎技能を習得し、初めて乗る場所では現地に詳しいガイドに特徴や危険な箇所を確認してほしい。

 気を付ければ非常に楽しく安全に沖縄の魅力を再発見できる。透き通ったリーフのサンゴを上から眺めるなんて最高だ。我慢ばかりの日が続くが、周囲に何もない海の上は気分をスッキリさせてくれるはず。自粛が解除されたら、ぜひ海の上から陸を眺めてみよう。
(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))