<南風>故人との対話


社会
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 お盆休みに、長編アニメ映画としてアカデミー賞を受賞した「リメンバー・ミー」を再び見た。

 家族や友人たちが集い、故人への思いをはせて語り合う「死者の日」というメキシコの祝祭をテーマにしていて、墓地にも派手な装飾を施すなど、1年に1度だけ他界した家族と再会できるという日本のお盆に似た風習に親近感が湧く。

 永六輔氏の言葉「人間は二度死にます。まず死んだ時。それから忘れられた時」がしっくりとくる映画だ。

 「人間にとって死は終わりではなく、霊魂は永遠に生き続ける」という考え方に立てば、亡くなった人はあの世で生きていることになる。そう考えた方がご遺族も幸せだ。大きな心の支えになるからだ。

 最大の供養は故人を思い出すことだと思う。故人と一緒に笑い、泣いた、懐かしい思い出が、愛・尊敬・感謝の念とともに故人に届けられれば、故人はあの世でもう一度死ぬことはないのではないか。

 TVドラマで「ママは死んじゃって月にいるから、自転車でどこを走っていてもお月さまがついてくるよ」という無邪気な子どものセリフがあった。夜空の月や星、海でもよいので、亡くなった愛する人を思い出してみてはどうだろうか。

 いま、コロナ禍のストレスも泣いて解消するという「涙活(るいかつ)」が注目されている。

 日常生活の中で抑圧されていた感情を涙で解き放つことができれば、悲しみや苦しみが浄化され、泣いて落ち着きリラックスした状態のときは、自分自身にも素直になれるようだ。中でも、仏壇の前で故人を思い出して泣くのが一番の安らぎではないかと思う。

 異世界への入口だった「ナルニア国物語」の洋服タンスのように、昔ながらの大きな沖縄仏壇があの世にいる故人と交信させてくれるかもしれない。
(佐久間康弘、株式会社サンレー代表取締役社長)