<南風>スポーツイベントを通じて


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 33回目の開催を迎えるツール・ド・おきなわのレース部門が2年連続で中止となった。賢明な判断であるが、北部地区を代表するスポーツイベントだけに参加者や事務局の気持ちを考えると非常に残念でならない。

 ここ数年、同大会でスポーツイベントに関する調査を行っており、疲労困ぱいの選手たちが調査に協力してくれる姿からは自転車への愛情やイベントに対する強い思い入れが感じられ、毎年感動させられる。

 ツール・ド・おきなわ協会のご厚意で調査に協力しているゼミ生たちと自転車で名護市内を散策させてもらう機会をいただいた。自転車での移動は自由にどこでも止まれて、じっくり見ることができて、移動速度が速いので広範囲を見て回れる利点がある。学生たちは何年もこの街で暮らしているが、車やバイクでの移動が主で、メインストリートや飲み屋街には詳しいが、下町や狭い路地などを知らないことも多い。

 街の魅力を再発見できた一方で、自転車の町と言われる名護市でも初心者が自転車に乗る際の難点がいくつか見つかった。この経験を基に自転車を用いたまちづくりに関する企画をゼミ生たちが提案し、自転車活用推進研究会主催の「散走」コンテストで大賞をいただいた。体験したスポーツ活動を通じてまちづくりや地域創生を考える取り組みは、まさにスポーツを活用した地域プロモーションであり、スポーツが持つ大きな可能性の一つである。引き続き学生たちと取り組んでいきたい。

 私自身もスポーツイベントにインスパイアされ、何度か山の上の職場まで自転車での出勤を試みたが、到着する頃には汗だくで講義どころではなかった。ただ学生ばかりに自転車の活用推進を言ってはいられない。もう少し涼しくなったら、再チャレンジしてみたいと思う。
(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))