<南風>小さなペンフレンド


社会
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 私は手紙が好きである。

 初めての手紙は1954年、兼原小学校に転校した2年生の時に書いている。当時、県内の学校に本土の生徒たちから手紙が送られてきて、先生方が文通を奨励していた。私はその中から文通相手を選んだ。

 その頃の沖縄の通貨はB円である。6年生の途中でドルに切り替わり、郵便料は3セントになったが、B円時代はいくらだったかはっきりしない。手紙を送るときは米原部落の共同売店まで走って行った。そこが郵便局の代理店も兼ねていたように記憶する。

 あれから歳月が流れ、世はメール時代になった。私の手紙の数も減って、何となくさみしい思いをしていたら、新星が現れた。しかも、63歳も年下のハンサムな小学6年生である。

 私の信頼するバイオリニストの宮良美香さんから紹介された少年。彼の名前は上原莞爾さんと言う。バイオリンのほか、劉衛流の空手道場にも通っている。私たちは昨年の五嶋龍リサイタルの時に会い、なぜか文通することになった。

 彼の第1信を、私は天にも昇るような気持ちで読んだ。彼の手紙は天真らんまんそのものだ。バッハの無伴奏ソナタに挑戦したいとか、スヌーピーが好きで本を全巻読んだとか、いろいろ書いてくる。実に楽しい。

 今度、フレッシュコンサートで琉球交響楽団をバックにモーツアルトの協奏曲5番を弾くという。手紙には「カデンツアが難しいです」と書かれていた。先生は「練習嫌いが玉にきず」とこぼすが、隠れたところで、しっかり練習しているに違いない。彼は集中力を発揮して、きっと見事な演奏を披露すると思う。

 彼はパイロットになる夢を持っているそうだ。何年か後に、空の上で、バイオリンを弾くパイロットが誕生するかもしれない。

 莞爾さん、バイオリンの練習頑張って!

(新垣安子、音楽鑑賞団体カノン友の会主宰)