<南風>スポーツ観戦の醍醐味


社会
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 通称“闘牛場”と親しまれている、うるま市の「石川多目的ドーム」は、すり鉢型形状で格闘技とも相性が良い。中央に据えたリングを見下ろす客席はどの位置からも観戦しやすく、コンクリート製のドーム全体がまさにコロシアムといった風貌だ。なんといっても360度換気可能な半屋外施設は感染防止対策の面からも施設最大の利点だ。

 この石川多目的ドームの半屋外施設という強みを生かし、昨年7月に緊急事態宣言解除後国内初となる観客動員プロボクシング興行を開催した。ブロック指定席の導入、観客の入場動線管理、チケットでの個人情報管理など、この時の運営方法が現在の興行開催のモデルケースとなっている。

 その後、プロボクシング界では、協会・コミッションの横断的組織であるコロナ対策協議会主導の下、感染防止策の強化・徹底を積み重ねてきた。その成果もあり、東京・大阪を中心に地方でも興行数が戻りつつあり、選手の試合機会が増えていることは喜ばしい。

 今月からスポーツイベントの観客入場制限緩和に向けた実証実験がJリーグやプロ野球でスタートした。ワクチン接種や検査の陰性証明を条件とした「ワクチン・検査パッケージ」だ。Bリーグでは顔認証ソリューションによる新たなスポーツ観戦体験の実証実験が行われた。待ち時間の削減、非接触による感染リスクの低減が期待できる。コロナ禍を経てスポーツの分野でも新たな取り組みや仕組み作りの進化は続くだろう。

 スポーツ観戦の醍醐味は空間と時間を共有すること。ボクシングに至っては、パンチの音や飛び散る汗、選手の息遣い、勝負が決まる瞬間など会場観戦で味わえる臨場感は格別だ。あす10日、沖縄で1年3カ月ぶりにプロボクシング興行を開催する。石川多目的ドームで、ぜひスポーツ観戦の醍醐味を味わってほしい。

(平仲絢子、平仲ボクシングスクールジム マネージャー)