<南風>スポーツイベントの変化


社会
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 緊急事態宣言は解除されたが、イベントの開催には制約も多く、県内でもオンラインやバーチャル(仮想現実)映像を活用したスポーツイベントが開催されている。バーチャルなスポーツイベントには、PCゲームをスポーツ競技化する形式や実際に体を動かしたパフォーマンスを仮想空間に反映する形式などがある。

 サイクルイベントでは、オンラインに接続された室内のローラー台で自転車をこぐと、仮想空間の中を自分の分身であるアバターが他の者と競う様子がモニターに映し出される。強度によって心拍数が上昇し、汗をかきながらタイムや順位、完走などを競う。昨年、その効果をWebコース上に沖縄の風景や実際のコース映像を反映させたサイクルイベントで調査した。

 約8千人の参加者の90%以上が海外からの参加と、その市場の広さに驚いた。スポーツ活動の継続に効果があり、手軽さもあり、競技参加へのきっかけやトレーニング機会の創出に結び付くことが分かった。そして実際に訪れるわけではないが開催地への愛着向上や将来的な誘客に結び付く効果が確認できた。

 ただ、リアルなイベントでは創出できていた人との触れ合いや参加者同士のつながりを作るのは難しかった。人との接触が制限されるWithコロナの社会では人のつながりやサービスをどのように伝えていくかが課題と考える。もちろん沖縄の気候や自然の美しさによって来島や誘客を期待できるが、今後のスポーツイベント開催には参加者のグループやコミュニティー形成を促す仕組みづくりを工夫すべきであろう。また地域と参加者、イベントをつなげるための人材を養成する必要があると考える。

 観光立県の活気を取り戻すためにも、楽しみながら参加できる温かみのあるイベントを開催できるように研究を進めたい。
(平野貴也、名桜大学教授・博士(スポーツ健康科学))