<南風>どうしてもやりたいこと


社会
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 学生時代、ウインドサーフィンの大会に出場するために鹿児島から全国各地の海岸にボードを車に積んでお邪魔した。海外ではフランス、イタリア、ドイツ、デンマークなど欧州を3カ月転戦したこともある。貧乏遠征だったので大会会場にしか行けず、スポーツツーリズムを推進している今となってはもったいない事をしたと思っている。

 遠征に行くためには用具や交通費が必要で、練習が終わった夜の時間は毎日スーパーのレジや家庭教師、ガテン系肉体労働など多くのアルバイトを掛け持ちしながら捻出した。特にラーメン屋さんには長い間お世話になり、酔っぱらいに絡まれ、仕事終わりのホステスにからかわれながら店を任されて深夜3時過ぎまでラーメンを作り続けた。

 学生なので授業もあり、朝起きる時にはもちろん眠かったが、どうしてもレースには出場したかったし、自分からやり出したことなので、少しも苦ではなかった。下手の横好きで、大会で大して上位を走れたわけではなく、活躍できたわけでもないが、結果が出なくても、失敗しても、できるまでコツコツやり続けるという大切なことを学んだ気がする。

 学生時代に寝る間を惜しんで、どうしてもやりたいことに出会えたことは非常に幸せで、充実感を味わえた。スポーツに限らず、研究でも、趣味でも、そんな出会いを作れるように学生たちとは真剣に向き合いたいと思っている。

 卒業間近にオーナーから店を継がないかと言われ、真剣に悩んだ。海沿いに飲食店併設のショップを展開し、日中は大好きなウインドサーフィンを思う存分楽しんで、夜はラーメン店を経営するという淡い人生プランを考えた。あのままのれん分けしてもらっていたら、どんな人生になっただろう?と沖縄そばを食べる度に思いを巡らしている。
(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))