<南風>体験の重要性


社会
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 先日、学生たちと海岸に行く機会があり、砂浜が広がったのかと錯覚するほど海を埋め尽くす軽石に驚いていた。彼らもネットやメディアで軽石が打ち寄せる状況は知っている。でも実際に見て、触って、においを感じるのでは全然違ったようで早速、海底火山について検索を始めた。スマホのCMで「現場に行かなければ、現実は見えてこんぞ」とクイーンが言っているように実際にやってみないと分からないことは多い。

 ゼミ活動では研究を進めるに当たって学生たちに、スポーツ実践でもイベント調査でも、まず街や自然、人と直接的に触れ合う活動を通じて課題を探すように促している。ああしろ、こうしろではなく身体で感じて、気付くようなことが大切だと考える。そして、理論や知識を得ることはもちろん必要だが、やってみようと思うことや気付きを促す声掛けが重要である。地域の協力が得られるからこそ実施できている活動も多く、とても感謝している。

 夏休みにゼミ生たちと美ら海水族館の前のビーチで小中学生を対象としたウインドサーフィン教室を10年くらい開催してきた。学生たちは自分たちが学んだ技能や知識を生かして指導する成果を感じ、子どもたちは風を感じ、初めて水面を走る不思議な感覚を得ることができる活動である。

 息子の授業参観のために訪れた小学校の廊下で、女の子がウインドサーフィンに乗っている絵日記が目に留まった。夏の思い出として、体験教室で感じた風の力ときれいな海を守りたいという内容を書いてくれていた。こうした心に強く残る、気付きを促すことが体験する意味だと考える。教育現場でも体験活動の重要性が言われて久しい。時間と手間はかかるが、やってみたくなる、調べてみたくなる心の琴線に触れるような活動をこれからも推進してきたいと思う。

(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))