<南風>プレーヤーズセンタード


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 高校では陸上部に所属していた。走るのが楽しくて、部活のために登校していたと言っても過言ではない。先生が熱心に指導してくださり、私もああなりたいと教育の道を志すきっかけとなり、とても感謝している。ただ朝練も放課後も週末にも練習や試合があって先生には大変な負担を掛けていたのだと思う。

 世間でも○○ファーストと使われ、スポーツ界ではプレーヤーズファースト、ウイニングセカンドの前半部分だけが独り歩きし、選手が何よりも優先のように解釈されることもある。指導者ファーストは論外だが、選手の活動を優先するあまり指導者や保護者の生活が二の次になるのは望ましくない。

 スポーツには人生を豊かにする力があると言われる。日本スポーツ協会は選手を中心に取り巻く指導者や保護者など全ての関係者が幸福な状態にあることを意識しながら、選手が最大に力を発揮できるように支えていくプレーヤーズセンタードな考え方を提唱している。担当しているコーチ育成の講習会で「コーチの幸福」を考える単元があるが、受講生のコーチたちと話す中で幸福には選手や指導者だけでなく、選手を取り巻く全ての人がそれぞれに幸せや成長を感じていることが重要なようである。

 学校部活動を地域に移行する動きが進んでいる。教員にとって部活動の指導は楽しみや励みである一方で負担となる場合もあり、地域の指導者が加わることで活動の質が上がり、生徒も教員も気持ちよく臨めるなら素晴らしい取り組みとなる。指導者や費用面の課題もあるが、まずは地域で学校部活動と連携して何ができるか意見を出し合い、プレーヤーズセンタードな方針や実施方法を見いだす必要がある。スポーツ活動に関わる全ての人が幸せを感じられるスポーツ環境の構築を進めていきたい。
(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))