<南風>専門学校で学んだこと


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄に来る前は横浜でスポーツ指導者を養成する専門学校の教員としてマリンスポーツ科を担当した。週3日は海でウインドサーフィン、ライフセービング、ダイビング、ヨットなどの理論と実技を行う。教員は講義だけでなく教務や学務、学生募集全般をこなすため校内にいる2日間はめまぐるしく、やんちゃな学生が多かったので授業を聞いてもらう工夫を学んだ。

 海のコンディションはマチマチで風が強い日もあれば、波の高い日もある。夏の湘南の華やかな砂浜や雪が深々と降る極寒の海上で講義を行ったこともある。前回はできたことが、今回はできないなんてことは当たり前で、理不尽な思いもする。コツをつかめば簡単にできることもあるが、なかなかうまくならないからこそ、面白いとも言える。

 当時の学生と20年以上たった今も繋がりがあり、先日も一緒に仕事をさせてもらった。卒業生は専門学校で学んだことと異なる職業に就いた者も多いが、みんなライフスキルが高く、特にコミュニケーション能力は抜群でそれぞれの場所で活躍している。海で遊んでいるような学校だったが、自然の中で砂と潮と風にまみれ、仲間と協力する中で学生たちは大切なものを学んでくれたのだと思う。

 今の世の中は変化が激しく、便利な道具がどんどん作られ、情報がすぐに手に入る。もちろん便利なのはありがたいが、生きていくために必要な技術や一生大事にしたいものはそう簡単に手に入るものではなく、やはり地道な努力と試行錯誤を繰り返す中で得られるのだと教わった気がする。

 あの頃と同様に今も、実技授業の時は学生たちと同じ運動をし、楽しさもつらさも体感するようにしているが、50歳を超えた頃から体力的につらい時もある。いつまでも楽しさを共感できるように地道な努力を続けていけたらと思う。
(平野貴也、名桜大学教授・博士(スポーツ健康科学))