<南風>新しく得たもの


社会
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 私は人一倍、健康で、体力にも自信があった。人間ドックで異常が見つかり、できるだけ早く手術をするよう勧められた。寝耳に水だった。甲状腺を全て摘出して間もなく10年を迎える。先日、主治医から定期検査はもう必要ないと言われ、非常に感慨深かった。当時は手術のためロンドンオリンピックに帯同できず残念に思ったが、その後は傷跡も目立たず、何より今も生かされている。

 再発しなかったのは、まさに幸運で生かされた意味を考える。励まし、勇気づけてくれた周りの人や家族のありがたみを最も実感した。早く海に入りたい一心でリハビリに励み、大好きなことは人を強くするのだと感じた。そして、大げさかもしれないが神様にもう少し世の中のためにできることがあるのではないかと言われた気がした。

 災難に遭っても幸福になるように工夫や努力をすることを「災い転じて福となす」と言う。もちろん災いなど起きてほしくはないが、そこから何を気づくかが大切であると考える。

 トップ選手の育成も生涯スポーツや体験活動の推進をしたいし、未来を担う人材の育成も積極的に進めたい。沖縄が本当の意味でのリゾートアイランドと呼ばれるように、豊かな自然も守りつつ、スポーツビジネスを展開し、レジャープログラムの開発やサービス環境の整備を進めていきたいし、県民も旅行者も共に楽しめるスポーツツーリズムやスポーツイベントの開催にも貢献したい。やりたいことは山ほどあって、取り組むべき課題がたくさんあることに気付いた。

 そして、周りも自分も幸せになれることに全力で取り組むためにも、教育も研究もより着実に進めていこうと決意するきっかけになった。何かと災いが多い世の中だが、前を向いて趣味も仕事も課題をクリアすべく、努力を続けたいと思う。
(平野貴也、名桜大学教授 博士(スポーツ健康科学))