<南風>沖縄の恩人


社会
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 サンレーの創業者である私の父は、国学院大学で日本民俗学を研究していた。この学問の根底には「日本人を幸福にする」という志がある。実践重視の学びをもとに、冠婚葬祭という人間の幸せを第一に願う事業を構築した互助会を、父が生業(なりわい)としたことに運命的なものを感じる。

 父は「冠婚葬祭で多くの人々を幸せにしたい」という使命感に燃え、本土復帰の3日後に沖縄を訪れた。米軍の統治で沖縄の儀礼文化が消えていないか危惧したが、沖縄は「守礼之邦」のままで胸をなでおろしたという。

 この沖縄の儀礼文化を守り、さらに発展させたいという志で冠婚葬祭互助会を起業した。土地の風習や住む人々の気質などを総合的に考えた互助会システムを構築したのだ。相互扶助の精神が浸透している沖縄で、「一人が万人のために、万人が一人のために」という冠婚葬祭互助会が理解されないはずはなかった。

 そうした中、人の縁で初めて事業は花開く。フォートプラザの安田淳夫社長との偶然の出会いを契機に、大切な人脈を作ることができた。安田社長に対する心からの信頼が、沖縄における互助会システムの定着という豊かな実りにつながった。まさに人生は一期一会である。約半世紀が経過したが、2人は今でもかけがえのない親友である。

 昨年、安田社長は写真集『日本最大級の蝶 オオゴマダラ沖縄の美しい蝶』を発行された。美しさに圧倒されたが、経営もまたアートセンスが必要だろう。芸術家でもある安田社長の薫陶を受けながら、父の志を継承していく覚悟だ。

 連載を終えるにあたり、儀礼文化と相互扶助の精神「ゆいまーる」が次世代に伝えられることを願ってやまない。そして何より、沖縄の素晴らしさを再認識できたことに感謝したい。いっぺーにふぇーでーびる!

(佐久間康弘、株式会社サンレー代表取締役社長)