<南風>まねから学ぶ


社会
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 明けましておめでとうございます。先輩方が執筆していた「南風」を楽しみに拝見していた私に、1月からの執筆依頼を頂いた。いざ自分がとなるとためらう気持ちもあるが、このコラムでは、これまでの経験からの気付きや学びを記してみたいと思うに至った。

 何を書こうか考えていると、昔のことを思い出した。社会人として仕事を始めた頃、私はとにかく文章を書くのが苦手で、時間のかかる業務だった。前職の経営者団体は、文書や取材原稿の作成作業が多く、提出の度に上司から、たくさん校正の入った原稿を戻された。必死で直し再提出を行うやりとりは何年も続いた。どうしたら打破できるか? とにかく身に付くまでやってみようと思い、先輩の文章を必死にまねて苦手の克服に取り組んだ。

 その技術が自分のものだと実感できたのは、入社10年が経過した頃である。仕事を通して落ち込んだり、うれしかったりするなどいろいろな感情を味わいながら、まねるという作業を繰り返すことで、いつの間にか自分の中で技量が伸び、そこに込められた仕事の意味や思いも一緒に学んだのだと考える。

 「まねから学ぶ」モデリングは、日本の伝統的な技能においても採用され続けてきた。学びとは言葉で言われて、頭で理解できていても、自分自身で体験し、納得して初めて身に付くものである。それは時間で考えると非効率に感じるかもしれないが、本当に大切なものは、時間をかけ、いつの間にか身に付き、その人の財産となり、継承されていくものなのかもしれない。

 「私の行動は人に何を伝えているのであろうか」。50を超え、今度は後輩に背中を見てもらう年齢になった。それを考えた時、自分自身の生き方と行き方に向き合える年にしていきたいと心を新たに思っている。半年の間も楽しみたい。
(比嘉佳代、おきなわedu代表取締役)