<南風>ペット飼い主の貧困問題


社会
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 近年、大きな社会問題になっている多頭飼育崩壊。一般的には無秩序にペットが増え、飼い主が適正に飼える数を超えた結果、経済的にも破綻しペットを飼育できなくなる状況を指す。

 2017年に初めて猫の多頭飼育崩壊で関わったケースは地域包括支援センターからの相談だった。「車いすのご夫婦が猫を多頭飼いしており、猫の不妊手術をしていないことから増え続け、生活環境がかなり悪化している」という内容だった。当事者のお宅へお伺いすると、そこにはゴミとふん尿が何層にも山積みになった劣悪な環境に25匹の猫が取り残されていた。

 ロフトらしき2階部分には、猫のふんが何重も積み重なり、鼻をつく異臭、白骨化した子猫の亡きがら。想像を絶する光景でとてもショックを受ける。今でも鮮明に覚えているほどだ。

 その後も多頭飼育崩壊の相談が続き、当事者と関わる中、崩壊に至る人に共通点があった。それは高齢者や生活困窮、社会的孤立の状態になりがちな飼い主が多いこと。「動物がたくさんいる」という点から、動物の問題とされてしまっているが、これは人間の問題である。

 飼い主へ「動物を適切に飼育しなさい」と言う指導だけでは根本的な問題解決はできない。飼い主の困窮や社会的孤立などが問題となった場合は、人間の生活の支援が必要ということ。例えば生活保護のケースワーカーや地域包括支援センター、地域の中の社会福祉協議会、民生委員の協力なしでは対応できない。動物愛護団体だけでは到底解決できる問題ではないのだ。

 飼い主が社会から切り離されている場合、誰も気に掛けてくれることも、訪ねて来ることもない。結果として、人も動物も悲惨な結末を迎えてしまう。多頭飼育崩壊は、今、日本が抱える貧困や社会的孤立の問題が根底にある。

(畑井モト子、琉球わんにゃんゆいまーる代表理事)