<南風>じかんぐすい(時間薬)


社会
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 年の初めに、皆さん新年の抱負や目標を考えるのではないだろうか。仕事に就いている人は、この1年をどんなふうに働こうか、どこで働いていくかと心がザワつく時期ではないだろうか。実は企業側も同じ思いである。社員が次年度も一緒に働いてくれるだろうか、新入社員を迎えることができるだろうかと年度末は、次の新しい出会いへの期待と去る人との別れの寂しさを感じる時期である。

 これまで我が社でも、多くの別れを経験した。ほんの少しの価値観のズレが、同じ方向を目指せなくなる。何度も話し合うが、理解が得られず、最終的に別れを選んでしまう。その時は、経営者も心が折れそうになる。以前、落ち込む私に師匠が「どんなに頑張っても、今は解決できないことがある。そんな時、じかん(時間)ぐすい(薬)が必要だよ。時間をかけて解決できることがある。執着せずに手放してごらん」と諭してくれた。

 それからは、師匠の言葉を胸に一生懸命やってどうにもならない時は「じかんぐすい」を使っている。その間、私にできることは、企業として、子どもたちや保護者、社員、関わる全ての人々に対し真摯(しんし)に行動し、皆が幸せを感じ、この会社があって良かったと言われる存在になる努力をするしかない。離れてしまった方からの連絡や訪問は、今日までのつらい思い出を一瞬に変えてしまう体験だ。

 どんな悲しみや苦しみも必ず歳月が癒やしてくれる。そのことを沖縄では「時間薬(じかんぐすい)」と呼ぶ。時間こそが心の傷の妙薬と言える。つらい時期、休息や慰めの言葉は、その痛みを軽減させることはできるが、消し去ってはくれない。しかし、いずれは時が過ぎ去り、今の自分が幸せであるなら、その出来事は時間薬の効果で、良き思い出に変わり、私の経験の一頁に刻まれる。

(比嘉佳代、おきなわedu代表取締役)