<南風>にゃん太に感謝


社会
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 17年前の1月。白黒の小さな猫との出合いが私の人生を大きく変えた。

 大阪に住んでいたとても寒いある日のこと。外から「ニャーニャー」と猫の鳴き声が聞こえてきた。当時、私が住んでいたマンションはペットを飼育している人が多かったので、最初はどこかのおうちの猫の鳴き声かなとしか思わなかった。しかし1時間たっても鳴き声が聞こえてくる。気になり鳴き声の方へ向かった。

 屋上へ上がる階段に小さな白黒の猫が寒そうにうずくまっている。近づいても逃げない、抱っこもできる。人に慣れているようだった。こんな寒い日に外にいるのはかわいそうに思い、連れて帰った。まだ1歳ぐらいだろうか、子猫ではないけど小さい。

 翌日、近隣やマンションの人に猫を知らないか聞いて回ったが飼い主さんは見つからず、その後も白黒の猫を探しているという情報もないまま日がたった。捨てられたのかもしれない。

 この頃の私は自分で心の壁を作り、周囲を遠ざけ、孤独を感じていた。友人もほとんどいなかった。捨てられたかもしれない白黒の猫の境遇と自分が重なる。

 その後、この猫を飼うことを決め、「にゃん太」と名付ける。それからの私はきちんと家に帰るようになり、生活習慣も変わり、仕事も続くようになった。孤独で押しつぶされそうになり、死にたいと思っても踏みとどまる。それはにゃん太が私のそばにいてくれたからだ。

 私は猫を助けたようで実は助けてもらったのだ。そんなこともあり、猫に恩返しをしたいと思う気持ちが年々増していき、動物愛護の活動へもつながった。今まで生きてきた中で、これほど夢中になり一生懸命に頑張ったことはない。そして、今は生きたいと強く思っている。昔の私が今の私を見たらずいぶん驚くだろう。猫にありがとう。

(畑井モト子、琉球わんにゃんゆいまーる代表理事)