<南風>社会を変えたコロナ


社会
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 筆者はとある福岡の大学授業を手伝っている。大学生が海外の「国際模擬仲裁」大会に出場するのを指導するゼミである。「仲裁」というと聞きなれないかもしれないが、一種の裁判のようなものだ。違う国の企業同士の法的紛争を、法曹経験者など専門家が「仲裁人」として判断する民間手続きである。企業の国際取引紛争を判断する場合、国の機関である裁判所よりも中立的で柔軟な仲裁の方が望ましいとされている。

 「国際模擬仲裁」では、架空事案の資料を読み込み、法律文書を作成し、仲裁人の前で口頭弁論をする。20歳前後の学生たちがこれら全てを英語で行う。筆者の役割は、法律実務や英語に不慣れな学生たちが作業をする時のコーチ役だ。

 当然ながら大会運営もコロナの影響は免れられない。本来、ウィーンや香港に集まり対面で開催するところ、2021年3月の大会はオンライン開催を余儀なくされた。アジア、欧米、アフリカなど世界各国の学生とパソコンの画面越しに、しかも英語で討論するのは不便も多く、学生にとっても大変な作業である。

 毎週の大学授業も教室ではなくWeb会議である。おかげで筆者も沖縄に居ながらにして毎週欠かさず福岡の授業に参加できる。

 コロナまん延とそれによる人の移動の制限が世の中のあらゆる事象を変えたことは間違いない。しかし時間は止まらない。コロナが収束しようとしまいと、毎年必ず18歳前後の大学生が入学する。「コロナが収束したら」と言って教育を先送りすることは許されない。コンパもバイトもサークル活動もできなくても、学生たちは慣れないパソコンを駆使し必死に何かを習得しようと努力している。

 この授業を通じた学生との接触が、社会や大人たちが学生や子どもたちに何をしてあげられるかを考えるいいきっかけとなった。
(絹川恭久、弁護士・香港ソリシター)